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東京地方裁判所 平成3年(特わ)1474号 判決 1992年4月28日

本店所在地

東京都武蔵野市中町一丁目二三番一号

株式会社

伊勢屋

(右代表者の住居 東京都保谷市柳沢三丁目六番二号)

右代表者代表取締役

大谷博文

本店所在地

東京都新宿区新宿一丁目九番一号

株式会社

マックホームズ

(右代表者の住居 東京都中野区東中野四丁目二六番三号)

右代表者代表取締役

久保島英明

本籍

東京都武蔵野市西久保二丁目二六番一一号

住居

同都同市西久保二丁目五番一二号

元会社役員

園部一豊

昭和一九年三月二日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官北原一夫、弁護士土屋東一(主任)、竹村照雄各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社株式会社伊勢屋を罰金四〇〇〇万円に、被告会社株式会社マックホームズを罰金一億円に、被告人園部一豊を懲役一年六月にそれぞれ処する。

被告人園部一豊に対し、未決勾留日数のうち四〇日をその刑に算入する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社株式会社伊勢屋(以下、被告会社伊勢屋という)は、東京都武蔵野市中町一丁目二三番一号(昭和六二年五月二五日以前は同町一丁目三一番一二号)に本店を置き、不動産の売買及びその仲介等を目的とする資本金二〇〇〇万円の株式会社であり、被告会社株式会社マックホームズ(以下、被告会社マックホームズという)は、同都新宿区新宿一丁目九番一号(平成元年一一月二七日以前は同区西新宿七丁目五番一四号)に本店を置き、不動産の売買及びその仲介等を目的とする資本金四億五〇〇〇万円(平成二年一一月二〇日以前は一億五〇〇〇万円、昭和六三年四月七日以前は九五〇〇万円)の株式会社であり、被告人園部一豊は、被告会社伊勢屋の実質経営者として被告会社伊勢屋の業務全般を統括するとともに被告会社マックホームズの代表取締役として被告会社マックホームズの業務全般を統括していたものであるが、被告人園部一豊は、右両被告会社の業務に関し、いずれも法人税を免れようと企て、架空の仕入高及び支払手数料を計上するなどの方法により、それぞれ所得を秘匿したうえ

第一  昭和六〇年一〇月一日から同六一年九月三〇日までの事業年度における被告会社伊勢屋の実際所得金額が一億三四九七万一四二八円、課税土地譲渡利益金額が二六一一万五〇〇〇円(別紙一の1修正損益計算書のとおり)であったのにかかわらず、右法人税の確定申告期限の経過後である同六一年一二月一日、東京都武蔵野市吉祥寺本町三丁目二七番一号所轄武蔵野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三八六九万三〇七〇円で、これに対する法人税額が一五一六万五三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告会社伊勢屋の右事業年度における正規の法人税額六二〇七万六七〇〇円と右申告税額との差額四六九一万一四〇〇円(別紙二の1脱税額計算書のとおり)を免れ

第二  昭和六一年一〇月一日から同六二年九月三〇日までの事業年度における被告会社伊勢屋の実際所得金額が二億二七七一万〇四八六円、課税土地譲渡利益金額が九四四二万二〇〇〇円(別紙一の2修正損益計算書のとおり)であったのにかかわらず、同六二年一一月三〇日、前記武蔵野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二七一二万八三〇三円、課税土地譲渡利益金額が二四五二万五〇〇〇円で、これに対する法人税額が一五一四万〇四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社伊勢屋の右事業年度における正規の法人税額一億一三三六万四二〇〇円と右申告税額との差額九八二二万三八〇〇円(別紙二の2脱税額計算書のとおり)を免れ

第三  昭和六一年七月一日から同六二年六月三〇日までの事業年度における被告会社マックホームズの実際所得金額が五億四四四〇万八〇八三円、課税土地譲渡利益金額が四億三九〇七万三〇〇〇円(別紙一の3修正損益計算のとおり)であったのにかかわらず、同六二年八月三一日、東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号所轄新宿税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億四〇七五万三八一〇円、課税土地譲渡利益金額が七九八七万一〇〇〇円で、これに対する法人税額が七〇七八万八八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社マックホームズの右事業年度における正規の法人税額三億一二一六万四三〇〇円と右申告税額との差額二億四一三七万五五〇〇円(別紙二の3脱税額計算書のとおり)を免れ

第四  昭和六二年七月一日から同六三年六月三〇日までの事業年度における被告会社マックホームズの実際所得金額が二億一五二四万七〇六七円、課税土地譲渡利益金額が二億二八四四万一〇〇〇円(別紙一の4修正損益計算書のとおり)であったのにかかわらず、同六三年八月三〇日、前記新宿税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五六九八万九六五〇円で、これに対する法人税額が一八九二万四八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社マックホームズの右事業年度における正規の法人税額一億三一〇八万一四〇〇円と右申告税額との差額一億一二一五万六六〇〇円(別紙二の4脱税額計算書のとおり)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判事全事実につき

一  被告人園部一豊の当公判廷における供述

一  被告人園部一豊の検察官に対する供述調書(二通。検乙一、一六)

判事冒頭の事実につき

一  被告人園部一豊の検察官に対する供述調書(検乙九)

一  登記官作成の登記簿謄本(二通。検乙一七、一九)

一  登記官作成の閉鎖登記簿謄本(二通。検乙一八、二〇)

判事第一、第二の各事実につき

一  被告人園部一豊の検察官に対する供述調書(六通。検乙一〇ないし一五)

一  大谷博文(検甲三七)、鹿内紀子(検甲三八)の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の仕入高調査書(検甲二三)

一  大蔵事務官作成の支払手数料調査書(検甲二四)

一  大蔵事務官作成の期末棚卸高調査書(検甲二五)

一  大蔵事務官作成の受取利息調査書(検甲二九)

一  大蔵事務官作成の役員賞与調査書(検甲三〇)

一  大蔵事務官作成の損金不算入役員賞与調査書(検甲三二)

一  大蔵事務官作成の課税土地譲渡利益金額調査書(検甲三六)

一  検察事務官作成の捜査報告書(検甲四五)

一  大蔵事務官作成の領置てん末書(検甲四〇)

判事第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の欠損金額当期控除額調査書(検甲三四)

一  大蔵事務官作成のみなし犯則損調査書(検甲三五)

一  押収してある法人税確定申告書(六一・九期)一袋(平成三年押第八九一号の3)

判事第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の期首棚卸高調査書(検甲二二)

一  大蔵事務官作成の事務用品費調査書(検甲二六)

一  大蔵事務官作成の広告宣伝費調査書(検甲二七)

一  大蔵事務官作成の現場雑費調査書(検甲二八)

一  大蔵事務官作成の賞与調査書(検甲三一)

一  大蔵事務官作成の事業税認定損調査書(検甲三三)

一  押収してある法人税確定申告書(六二・九期)一袋(前同押号の4)

判事第三、第四の各事実につき

一  被告人園部一豊の検察官に対する供述調書(七通。検乙二ないし八)

一  久保島英明の検察官に対する供述調書(二通。検甲一六、一七)

一  大蔵事務官作成の期首棚卸高調査書(検甲一)

一  検察事務官作成の捜査報告書(検甲四四)

一  大蔵事務官作成の当期仕入高調査書(検甲二)

一  大蔵事務官作成の期末棚卸高調査書(検甲三)

一  大蔵事務官作成の工事費調査書(検甲四)

一  大蔵事務官作成の支払手数料調査書(検甲五)

一  大蔵事務官作成の雑費調査書(検甲八)

一  大蔵事務官作成の受取利息調査書(検甲一〇)

一  大蔵事務官作成の雑収入調査書(検甲一一)

一  大蔵事務官作成の課税土地譲渡利益調査書(検甲一五)

一  検察事務官作成の捜査報告書(検甲四三)

一  大蔵事務官作成の領置てん末書(検甲一九)

一  押収してある法人税確定申告書(六二・六期)一袋(前同押号の1)

判事第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の現場雑費調査書(検甲六)

一  大蔵事務官作成の広告宣伝費調査書(検甲七)

一  大蔵事務官作成の有価証券売却益調査書(検甲一二)

判事第四の事実につき

一  大蔵事務官作成の事業税認定損調査書(検甲九)

一  大蔵事務官作成の役員賞与調査書(検甲一三)

一  大蔵事務官作成の損金不算入役員賞与調査書(検甲一四)

一  押収してある法人税確定申告書(六三・六期)一袋(前同押号の2)

(法令の適用)

被告人園部一豊の判示第一ないし第四の各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に、被告人園部一豊の判示第一、第二の各所為は被告会社伊勢屋の業務に関して、判示第三、第四の各所為は被告会社マックホームズの業務に関してそれぞれなされたものであるから、両被告会社については、いずれも同法一六四条一項、一五九条一項にそれぞれ該当するところ、被告人園部一豊については、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、両被告会社については、いずれも情状により同条二項をそれぞれ適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人園部一豊については同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、両被告会社については同法四八条二項によりそれぞれ罰金額を合算し、被告人園部一豊については右加重した刑期の、両被告会社についてはそれぞれ合算した罰金額の各範囲内で被告人園部一豊を懲役一年六月に、被告会社伊勢屋を罰金四〇〇〇万円に、被告会社マックホームズを罰金一億円にそれぞれ処し、被告人園部一豊に対し、同法二一条を適用して未決勾留日数中四〇日を右刑に算入することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人園部一豊において被告会社伊勢屋について二年度にわたって約一億四五一三万円、被告会社マックホームズについて同様二年度にわたって約三億五三五三万円、二社合計約四億九八六六万円をほ脱させたものであるところ、そのほ脱合計金額は、近時のほ脱事犯の中でも高額の範疇に属する。ほ脱率も被告会社伊勢屋について通算八二・七パーセント、被告会社マックホームズについて同じく七九・七パーセントで、いずれも高率である。ほ脱の手口は、架空原価の計上、雑収入の一部除外等であるが、被告会社伊勢屋については三六社分(うち五社分については被告会社マックホームズから融通を受けたもの)の、被告会社マックホームズについては二六社分の各架空名義の領収書用紙を印刷業者に印刷させ、或いは社名入りのゴム判を作ったうえ、各印鑑も準備し、これらを用いて架空経費を計上したもので、極めて計画的かつ大胆なものである。なお、各被告会社の資金力の充実と安定を図るためとの動機は、法人税法違反として格別酌むべき事情とはならないというべきである。以上によれば、被告人園部一豊の受けるべき社会的な非難は大きく、刑事責任は重いというべきである。

他方、被告人園部一豊は、査察の段階から素直に事実を認め、当公判廷においても反省の情を披瀝し、二度と違法行為に及ばないことを誓約しており、その誓約に信が措けること、両被告会社は、共に起訴以前に修正申告をしてほ脱にかかる本税、重加算税、延滞税、地方税をすべて完納していること、被告会社マックホームズにおいて被告人園部一豊のワンマン体制を改め、業務分掌を明らかにしたうえ、顧問税理士の指導を強化するなど経理体制を整え、本件同種事犯の再発防止策が講じられていること、被告会社伊勢屋においても同様、再発防止策が見込まれること、被告人園部一豊の経営方針に基づく両被告会社の勤労者用住宅の供給・維持などの企業活動を通じて、社会的な貢献をしていること、両被告会社は、いずれも被告人園部一豊の事業に対する卓抜した先見性と実行力とによって支えられてきているもので、被告人園部一豊を施設内処遇することにより、両被告会社の業務運営に多大の支障を生じさせ、ひいては約二五〇名の従業員の生活に影響を及ぼさせる虞れも大きいこと、妻のほか二〇歳の長男、一八歳の長女を有する一家の柱石であることなど酌むべき事情も存する。

以上の各情状のほか、その他諸般の事由を勘案し、両被告会社に対し、それぞれその罰金額を定め、なお、被告人園部一豊に対しては実刑に処するのはやむを得ないものとして、その刑の量定をした次第である。

よって主文のとおり判決する。

(求刑・被告会社伊勢屋に対し罰金五〇〇〇万円、被告会社マックホームズに対し罰金一億二〇〇〇万円、被告人園部一豊に対し懲役二年六月)

(裁判官 伊藤正高)

別紙-1 修正損益計算書

No.1

<省略>

別紙-1 修正損益計算書

No.2

<省略>

別紙-2 修正損益計算書

No.1

<省略>

別紙-2 修正損益計算書

No.2

<省略>

別紙-3 修正損益計算書

No.1

<省略>

別紙-3 修正損益計算書

No.2

<省略>

別紙-4 修正損益計算書

No.1

<省略>

別紙-4 修正損益計算書

No.2

<省略>

別紙二

脱税額計算書

会社名 株式会社伊勢屋

1 自 昭和60年10月1日

至 昭和61年9月30日

<省略>

2 自 昭和61年10月1日

至 昭和62年9月30日

<省略>

別紙二

脱税額計算書

会社名 株式会社マックホームズ

3 自 昭和61年7月1日

至 昭和62年6月30日

<省略>

4 自 昭和62年7月1日

至 昭和63年6月30日

<省略>

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